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会計税務ニュース

【韓国の会計・税務レポート】相続税制の改正に対する議論

韓国を代表するサムスングループの李健煕会長の死去(2020年10月25日)後、

遺族が全遺産の半分を超える12兆ウォン以上の相続税を納付しなければならないことが報道され、

財界を中心に相続税負担が過剰であるとの指摘が相次いで提起されてきました(2020年11月のレポート参照)。

2021年10月初めの国政監査で経済副総理兼企画財政部長官は、

相続税課税体系の改編案を検討していることを明らかにしました。

今後は、相続税制改正のための動きが活発になると予想されています。

 

現行相続税制の改正に関する争点は、①相続税率及び課税標準区間の調整、②遺産取得税への課税方式の転換、

③贈与税との整合性です。相続税率は、課税標準30億ウォン以上に対し50%の最高税率が適用されていますが、

同税率は日本(55%)の次に最も高い水準で、フランス(45%)、アメリカ(40%)よりも高いです。

遺産取得税への転換も問題になっているところ、現在は被相続人の遺産総額に基づいて相続税を課税していますが、

相続人が取得した遺産に基づいて相続税を計算すべきであるとのことです。

最後に、相続税を遺産取得税方式に転換する場合、現行の取得税方式である贈与税と課税標準区間、

所得控除と税額控除との整合性維持のため、贈与税課税体系全般について再検討する必要があるとのことです。

 

一方、国会立法調査処[1]は、2021年10月1日付で

「OECD加盟国の相続関連税制と示唆点」と題する報告書を発行しました。

同報告書は、OECD加盟国を中心に、各国家が現在の相続関連税制に対して如何なる政策を取っているかを確認し、

韓国の相続税制の改正議論に対する示唆点を提示しました。

特に、ドイツ、日本など20カ国で採択されている遺産取得税の導入を検討する必要があると明らかにしました。

 

以下は同報告書の主な内容です。

 

2021年現在、OECD加盟国38カ国のうち、相続関連税金を賦課する国は、アメリカ、イギリス、フランス、

ドイツ、日本、韓国など総24カ国であり、

資本利得で課税する国はオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、スウェーデンの4カ国、

追加所得税(Extra Income Tax)で課税する国はラトビア、コロンビア、コスタリカの3カ国

及び非課税国はオーストリア、メキシコ、ノルウェーなど7カ国であると把握されています。

相続関連税金を賦課する国のうち、ポルトガルの場合は印紙税(Stamp Duty)の形式で賦課され、

直系家族間の場合は免除になるものと把握されています。

 

OECD主要国の相続控除と関連し、人的控除分野で、アメリカ、イギリス、フランスなどでは

配偶者控除においては限度がなく、日本の場合は、配偶者の法定相続分以下の

取得財産については全額控除としています。

 

現在、相続税を賦課しているOECD24カ国のうち、韓国、アメリカ、イギリス、

デンマークの4カ国を除いたドイツ、フランス、日本などの20カ国が取得課税型の方式を採択しております。

被相続人の相続財産自体に対して相続税を賦課する現在の遺産税方式よりは、

各相続人の遺産の帰属による所得に対してのみ課税する遺産取得税の方式が、

相続税の二重課税の議論から少し自由になれると評価されています。

但し、このような長所があるにも関わらず、遺産取得税方式も税負担の軽減を図るために

虚偽の分割申告が横行する恐れがあり、遺産分割の実態に関する公示に不備がある場合は

適正な税務執行が困難になる点などが短所として指摘されることもあるため、

各国の社会制度、税務行政の水準、個人所得税の補完性、国民の納税意識などを勘案し、

如何なる類型を選択するかを決定すべきと考えます。


[1] 立法及び政策に関連する事項を調査・研究し、それを国会の委員会と国会議員に提供することにより国会議員の議会政治活動を支援する、国会法と国会立法調査処法にもとづいて設立された国会の専門的な立法・政策調査分析機関です。