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会計税務ニュース

【韓国の会計・税務レポート】2019年度国税行政運営方案

国税庁は、2019年1月28日、政府世宗庁舎で2019年度全国税務官署長会議を開催し、全国税務官署長等293名が出席したなか、『国税行政運営方案』を確定・発表し、下記の重点推進課題を完遂させることを確約しました。国税庁は、「国民が生活の中で体感する税政成果と変化の創出」と言う戦略の下で、以下の6つの課題を発表しました。

 

l  税収予算の安定的な調達により国家財政需要を忠実に支える

l  自発的誠実納税を積極的に支援するサービス税政の確立

l  不公正脱税行為に厳正に対応し、租税正義を実現

l  皆が幸せに暮らす経済のための税政側面での支援を拡大

l  先端技術を基盤に科学税政力量の画期的強化

l  変化の価値に応じた真正性のある内部改革の推進

 

上記課題のうち、納税者に影響を及ぼす可能性のある内容を紹介します。

 

1.不公正脱税行為に厳正に対応し租税正義を実現

国税庁は、公正社会に反する大企業・大資産家の脱税及び域外脱税、庶民生活密接分野の脱税等にその調査機能を集中させ、効果的な滞納対応体系を構築して悪意のある滞納を根絶する計画です。

(1)大企業・大財産家の変則的な脱税の根絶のため、調査機能を集中

大企業・社主一家の借名会社運営、企業資金の不法流出及び私益詐取、転換社債・新株引受権社債等の金融商品を活用した変則的資本取引を積極的に摘発し、仕事の一括集中発注による経営権の便法承継部分も集中的に調査すると発表しました。また、社主・役職員の横領・背任により捜査を受けた企業に対する脱税の可能性についても重点的に検証する予定です。このため、国税庁は家族関係資料を拡大・収集して高額財産家別親姻戚及び関連法人、支配構造等を精巧に構築し、財産変動内訳を常時確認する予定です。これにより、変則的な相続・贈与嫌疑に対する資金出処調査を強化し、高額資産を保有する未成年、多住宅保有者等、主要類型別に検証を強化する予定です。

 

(2)進化する域外脱税と多国籍企業の租税回避に強力対応

国内外の多角的情報網を活用し、①租税回避処の実体(Entity)を利用した脱税、②未申告域外口座・不動産の保有、③海外現地法人を利用した秘密資金の存在、④中堅企業・資産家、専門職の所得隠匿、海外独占事業権の無償移転、海外信託・ファンドを通じた便法贈与等)を適時摘発して対応する予定です。

多国籍企業に対しても、移転価格の操作、租税条約の恩恵を乱用する事例、デジタルIT企業の課税回避等、攻撃的租税回避に対する体系的な検証を強化する予定です。

 

(3)高所得者及び庶民生活密接分野の脱税に厳正に対処

市場環境の変化やIT技術発展等により、好況を呈する新種高所得事業者(スマートフォン基盤サービス事業者、金融・不動産コンサルティング業者等)、現金収入の高い専門職・賃貸業等に対する脱税検証を強化することにしました。また、庶民生活と密接した企業型金融業者(中小企業に運営資金等を貸付け、高利利息を受取る大規模金融業者)及び名義偽装遊興業者、射幸性ゲーム場等の脱税嫌疑に対しても分析・調査すると発表しました。

 

2.皆が幸せに暮らす経済のための税政側面での支援を拡大

今回の国税行政運営方案で、国税庁は不法脱税を意図的に行う納税者には税務調査で税金を追徴するが、経済的に困っている自営業者や低所得層に対しては、税政支援を強化すると発表しました。

 

(1)経済的に困っている自営業者・低所得層に対する税政支援の強化

2019年末まで施行する自営業者・小商工人への支援のための税務調査の除外・猶予、滞納額消滅制度等を持続的に案内して執行する予定です。また、本庁の徴税法務局長を団長にする『税政支援推進団』の運営を通じ、経営上の問題を抱えている自営業者等を先に把握し、納付期限の延長、徴収猶予、滞納処分の猶予等税政支援を行う予定です。

2018年には、約274万世帯に対して約1.8兆ウォンの勤労・子女奨励金が支給されましたが、2019年には、更に拡大することが予想されるため、同奨励金が蹉跌なく支払われるよう、申請サービスの拡大、電算システムの拡充、案内・広報の強化等を徹底的に準備して執行する予定です。

 

(2)雇用創出及び革新成長を税制面から積極的に支援

雇用創出企業に対する税務調査の猶予・除外等の恩恵を積極的に与え、小規模青年創業中小企業に対しては、開業初期は『申告内容の確認』も除外することにしました。

税政支援の対象をスタートアップ・革新企業から新成長産業の企業にまで拡大させ、税務上支障なく持続的に成長できるよう、企業別に合わせた税務に関する優遇措置情報等についてニュースレターで発送するか、或いはR&D控除減免に対する事例集も発刊して提供することにしました。

 

上記のように、2019年度国税行政運営方案の核心を要約しますと、大きく2つで分けられます。一つは、不法に脱税して高所得を上げる納税者には多くの税金を追徴するとのこと、もう一つは、運営に問題を抱えている自営業者には、最大限の便宜を提供し、税制優遇措置の恩恵を与えるとのことです。国税庁が発表した重点推進課題が蹉跌なく履行されることを期待してみます。

 

 

- 以上 -