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会計税務ニュース

【韓国の会計・税務レポート】国外支配株主等に支払う利息に対する課税調整(2)

去る1月のレポートで、国際租税調整に関する法律(以下、「国租法」という)に2017年12月19日付で新設されました「所得対比過多支払利息に対する損金不算入制度」及び「混成金融商品取引により発生する支払利息に対する損金不算入制度」を紹介しましたが、両制度と関連する施行令と施行規則がまだ公布されていなかったため、今後新設される後続措置を注意してみる必要がある旨ご案内致しました。その後、2018年2月13日と3月19日に、これらの制度に関連する国租法施行令及び施行規則が新設されました。

以下では、両制度と関連して新設された施行令及び施行規則の内容を紹介します。

 

1. 所得対比過多支払利息の損金不算入制度(国租法第15条の2、同法施行令第28条の3、同法施行規則第7条の4)

この制度は、OECD BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)行動計画 Action 4により、多国籍企業の支払利息の過多控除による租税回避を防止するために導入された制度です。国外支配株主からの借入金が国際支配株主の出資金の2倍を超過しなくても、即ち、現行の過少資本税制が適用されても、過多支払利息の損金不算入が適用できるという点で注意する必要があります。

 

(1) 適用対象

韓国標準産業分類による金融及び保険業を業としない内国法人に適用されます。

 

(2) 費用控除の制限

国外特殊関係者から借入れた金額に対する純支払利息が調整所得金額の30%を超過する場合、その超過支払利息が損金不算入とされます。ここで、調整所得金額と純支払利息の計算方法は以下の通りです。

①  調整所得金額=当該課税年度の所得金額+税務上減価償却費+純支払利息

②  純支払利息=国外特殊関係者に支払った支払利息-国外特殊関係者から受取った受取     利息

 

(3) 適用時期

この制度は、2019年1月1日以降に開始する事業年度より適用されます。3月決算法人の場合は、2019年4月1日に開始する事業年度より適用されます。

 

(4) 調整明細書の提出

国外特殊関係者から資金を借入れた内国法人は、国外特殊関係者に支払う純支払利息に対する調整明細書(別紙代10号の10書式)を法人税申告時に提出しなければなりません。

 

 

2. 混成金融商品取引により発生する支払利息に対する損金不算入制度(国租法第15条の3、同法施行令第28条の4、同法施行規則第7条の5)

この制度は、OECD BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)行動計画Action 2により、国家間税法差異を利用した租税回避を防止するために導入された制度です。但し、韓国と日本の間では税法上の取扱いが異なる金融商品は存在しないものと見えます。

 

(1) 概要

内国法人が国外特殊関係者と資本・負債の性格を同時に持っている金融商品取引を行う場合、内国法人が国外特殊関係者に支払った利息が適正期間内にその取引相手が所在している国で課税されない場合は、その利息を内国法人の損金に算入せず、その他社外流出として処分します。ここで適正期間及び課税されない場合は、以下の通りです。

①  適正期間:利息を支払った内国法人の事業年度終了日以降12ヶ月以内に開始する取       引相手の事業年度終了日までの期間

②  課税されない場合:相手国の税法により『配当所得』であるという理由により、取引相手        の課税所得に含まれないか、或いは10%未満で課税所得に含まれる場合

 

(2) 適用対象となる金融商品取引

内国法人と国外特殊関係者である外国法人との混成金融商品を利用した国際取引が適用対象になります。ここで混成金融商品とは、韓国の税法上は負債とみて関連する支払金を支払利息と取扱い、相手国の税法上では資本とみて受取金を配当所得と取扱う負債・資本の性格を同時に持つ金融商品、即ち、国家間で税法の取扱が異なる金融商品を言います。但し、金融及び保険業を業とする内国法人が発行した金融商品は除外されます。

 

(3) 損金不算入額の計算方法

1)  原則

以下のように、取引相手の課税所得に含まれない金額に該当する支払利息は、内国法人   の当該事業年度の損金から除外されます。

 

損金不算入額=支払利息×(課税所得に含まれない配当所得金額÷配当所得金額)

 

2)  例外

① 当初損金不算入と申告したが、適正期間内に取引相手の課税所得に一定基準(10%)以上含まれた場合は、当初損金不算入した金額を損金に算入します。

② 当初損金算入と申告したが、適正期間内に相手国で課税されない場合は、当初の損金算入額を益金に算入し、利息相当額(年10.95%)を加算して納付しなければなりません。

取引相手の課税所得に一定基準以上含まれるかどうかの当否と、課税されないかどうか     の当否は、納税者が立証しなければなりません。

 

3)  適用時期

この制度は、2018年1月1日以降開始する事業年度より適用されます。

 

4)  調整明細書の提出

内国法人は、混成金融商品関連支払利息に対する調整明細書(別紙第10号の11書式)   を法人税申告時に提出しなければなりません。

 

 

- 以上 -